あなたに会えたあの日から

生まれる前のやくそくが、今、現実になる

「よていひょう」

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こんばんは。nicosaです。

 

 

団体旅行はなんとなく苦手で、旅行に行くときは、一人か、親しい友人か夫か母親と二人で出かけてきました。

 

子どもが生まれてからは、家族三人で、プラス夫の両親、もしくはわたしの両親…というかんじです。

 

 

わたしはとにかく、

前もって旅程を、細かく細かく

分刻みで

決めておかないと心配で、

 

海外に行くときは、とくに

地下鉄やバスの時間まできちんと調べて、

 

タクシー乗り場まで何分かかるとか

美術館まで、パン屋まで、

徒歩何分とか

詳しく、細かく、調べます。

 

出発前に

劇場のチケットを取り、

レストランもできるだけ予約…

 

だから、

現地に着いたときには、ツアーガイドが

できるぐらい街のことをよく知っている…

そんなかんじなのです。

 

 

でもだいたい、海外に行くと、

自分の作った旅程のとおりには

なりません。

 

地下鉄は遅れるし、

ストで路線バスは走ってないし…

 

だから結局、

自転車をレンタルしていたり…

 

それもまた楽しい思い出になるのですが、

 

自分の作った「よていひょう」のとおりに

ならないことは、

 

結構、ショックだったりもします。

 

頭を抱えて、

頭の上には、大きな🌀が出ます…

 

 

今日は、そんなわたしとそっくりな「がまくん」が登場する、アメリカの絵本作家アーノルド•ローベルの作品『ふたりはいっしょ』の中の「よていひょう」というおはなしをご紹介します。

 

(『ふたりはいっしょ』作・絵:アーノルド・ローベル 訳:三木 卓 出版社:文化出版局 発行日:1972年11月)

 

 

 

 

いつも

考えごとが

頭の中をくるくると回っていて、

 

そのうちほんとうに

目が回ってしまって

寝込んでしまう…

 

そんなお茶目な「がまくん」と、

 

そんな「がまくん」に、

いつも優しくおおらかに寄り添う

「かえるくん」のおはなし。

 

「がまくん」と「かえるくん」のおはなしシリーズは4冊出版されていて、

 

そのシリーズ第2作目が『ふたりはいっしょ』というタイトルがついたもの。

その中には、5つのお話が収録されています。

 

 

 

 

ぼくには、することがいっぱいある。

 

がまくんは

一日の予定を書き出して、

 

一つずつ丁寧に

それをこなしていきます。

 

ところが、

 

その予定表の紙きれが、

突然

風に吹き飛ばされてしまい、

 

がまくんは、

何をしたらいいのか分からなくなって、

途方に暮れてしまうのです…

 

(磯崎園子  絵本ナビ編集長による「作品紹介」を参照)

 

 

『ふたりはいっしょ』の最初に収録されているおはなし「よていひょう」では、

 

「よていひょう」がなくなってしまって途方に暮れてしまう「がまくん」に、

 

いつものように

ともだちの「かえるくん」が

優しく寄り添います。

 

なくしてしまった

がまくんの「よていひょう」を、

かえるくんは、

がまくんの代わりに探します。

でも、やっぱり見つかりません。

 

最後は、

何をしたらいいのか、ほんとうに

分からなくなってしまい

もう何もできなくなってしまう

がまくん。

 

そんながまくんの横に、

かえるくんは

そっと座り、

 

そして、

 

「がまくん」

「家へかえってねなくちゃ」

と、言うのです。

 

 

すると、

がまくんは、やっと、

自分の「やること」を思い出して、

 

 

地面に、棒切れで、

「おねんね」と予定を書き、

その場で二人で寄り添って

眠り込んでしまう、

 

 

そんなお話しです。

 

 

 

 

作者アーノルド•ローベルの生い立ちや、

彼の奥さんアニタとのエピソードが、

本に挟まっていた

「作者紹介」に書かれていました。

 

 

「1933年5月22日、カリフォルニアのロサンゼルスに生まれる。まもなくニューヨークのスキネクタディに移るが、病気がちで、寂しい少年時代だったらしい。高校卒業後、ブルックリンの「プラット・インスティテュート」に入学。本のイラストレーションのおもしろさを知ることになる。

 

1955年同窓生のアニタと結婚。彼女は、ポーランドクラクフ生まれで、第二次大戦中、ナチスの手を逃れて各地を転々とし、戦後、一家でアメリカへ移住してきたのだった。

 

ブルックリンのマンションに住み、お互いに影響を与えながら、それぞれの絵本を作り続けていた」

 

文化出版局 アーノルド•ローベル「作者紹介」より引用)

 

 

 

わたしは、幼稚園に通っていた頃、

この「がまくん」と「かえるくん」の本を、

イラストレーターをしていた

叔母の仕事部屋の

本棚に見つけて、

 

「入っちゃダメ!」と、いつも

言われていた、その仕事部屋に

叔母の留守中に

 

こっそりと忍び込み、

 

この本や、

他のたくさんのアメリカの絵本を

眺めるのが大好きでした。

 

とくにこのアーノルド•ローベルの本と、

クラウスという人の本と

Mother Goose』という本は

叔母の蔵書の中でもお気に入りでした。

 

英語の本がほとんどでしたが、

「がまくん」と「かえるくん」シリーズと

クラウスの描いた絵本は、

日本語に翻訳された本でした。

 

『ふたりはいっしょ』の

おはなしは、

少し長めの文章ですが、

ひらがなで書かれていたので

 

わたしにも

読めました。

 

とても美しい優しい色使いの

絵が添えられていて、

 

わたしの好きな

小さな花や草や

小さな生きものたちが

あちこちに描かれていて、

 

その頃のわたしは

いつもそういう

花や草や、小さな生きものの世界の中で、

時間にも、天気にも、「おかあさん」にも、

何にも縛られることなく

過ごしていたので、

この絵本の世界観は、

とても安心ができて

心地よかったのかも

しれません。

 

 

それから、

 

 

「がまくん」と「かえるくん」の着ている

お洒落なジャケットや、

 

ジャケットについた

大きめのボタンのことを、とても、

 

何時間でも眺めていられるぐらい

 

気に入っていました。

 

 

 

 

この本の翻訳をされた三木卓さんの

添え書きを引用します。

 

三木卓「自然のこころをそのままに」教育出版•教師指導書より)

 

「生き生きと動物たちはとびはねるし、へまもするし、してやったりとうれしがりもするし、なかまのことを心配したりもする。

 

 いずれも、誰かに、そうしなさい、そうあるべきだと強制されてそうしているのではない。

 

主人公たちは、自分がそうなってしまうからそうしているだけであり、だからおもしろいのである。

 

 そして、そのユーモラスな世界は、ローベルのやさしさにつつまれている。」

 

 

 

戦争の時代を子ども時代に経験した

アーノルド•ローベルとアニタが、

アメリカで出会い、

 

新しい時代を生きる

子どもたちに

伝えたかったことが、

 

この本の中には、

ぎゅーっと、たくさん

詰め込まれて

いるのだと

思います。

 

 

 

この本が、今も子どもたちに

読み継がれていて、

 

この本が、今もちっとも

色褪せないのは、

 

 

二人が出会い、

切磋琢磨して

生み出した

どの時代の子どもたちをも

ワクワクドキドキさせてくれる

才能あふれる作品の力であり、

 

 

子どもたちを

おだやかに優しく見つめながら、

 

見えないメッセージを

送り続け、

 

「ほんとうにたいせつなこと」を、

この本を通して、

今もずっと、イキイキと、

子どもたちに語りかけて

いるからかもしれないなあと、

 

そんなふうに

思っています。

 

 

 

…忘れないで。

「がまくん」と「かえるくん」のこと。

「がまくん」と「かえるくん」と過ごした日のこと。

 

 

大人になって、

いつの間にか

 

他人の基準で作った自分の「よていひょう」に

がんじがらめになって、

 

身動きが取れなくなっていたけれど、

 

 

「誰かに、そうしなさい、そうあるべきだと強制されて」そうするのではなく、

 

「自分がそうなってしまうから」そうしている

 

そんな自分も居たことを

これからもずっと忘れないでいよう。

 

 

そんなことを考えながら、

 

 

春の嵐の後の

澄んだ水色の空の下に、

うすいもも色の花をつけた

桜の木が、

 

うぐいすの声に誘われて

ゆっくりと揺れるのを

わたしは、遠くから、見ていました。

 

 

nicosa