あなたに会えたあの日から

生まれる前のやくそくが、今、現実になる

ハブラシ

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こんばんは。nicosaです。


わたしの祖父は
戦争中、
北京へ兵隊に行っていたと
祖母から聞きました。

敗戦後は、歯ブラシのメーカーに勤めました。
仕事は営業でした。


今日は、
宣伝カーと呼ばれた社用車に乗って
敗戦まもない日本中を走り、
歯ブラシの販促活動をしていた
私の祖父のお話です。

 

トップの写真。

祖父の乗っていた宣伝カーと、
祖父たち営業マンの写真です。


舗装をしていない道なので、
道を整備しながら
日本中を走っていたんだよと
叔母から聞いたことがあります。


宣伝カーの中は広くて、
歯の診療に必要な設備と
展示用のパネル、映写機まで
備えていたんだとか。


講演や診療、
映画の上映などをして
歯をみがきましょう!と
啓発する活動もしていたんですね。


歯みがき剤の販売店
小・中学校を訪ね、
夜には野外映写会を開いたり。
大忙し。

移動動物園や童話の朗読、
歌謡ショーをする宣伝カーもあったそうで、

テレビもYouTubeもない時代、
とりわけ子どもたちは大喜びで、
全国どこでも大歓迎を受けたと
聞きました。


だから、白いベルトと
白いキャップで、
遊園地のキャストさんみたいな
服を着ているのかも。

 

わたしの知っている祖父は、

 

お行儀にとてもきびしく、
姿勢の悪いわたしの背中を
よく、ピシャン!と叩いていました。


口数が多い方ではなく、


本が好きで、
シェイクスピアやチャールズ・ディケンズ
好んで読んだようです。

そして、
とてもお洒落なおじいちゃんでした。

 

自分のために仕立てたスーツはもちろん、
祖父が、
祖母や、わたしの母、叔母、叔父のために
仕立てた洋服は、その形も色や柄も、

今見ても、とてもセンスがよくて、

糸や生地の組み合わせにも

とてもこだわりが感じられて、

 

選んだ家の調度品も、
無駄がなく、華美でなく、

家族を想って選んだことが分かる
とても落ち着く、素敵なものばかりでした。


歯をみがきなさい!と
言われたことはないですが、

いつも祖父と祖母の家に行くと、
祖父の達筆で、
「ニコチャン」と、マジックで書かれた
わたし用の新しい歯ブラシが、
洗面所に置かれていました。
 

お正月に親戚で集まってする
かるた大会では、

競技かるたの選手みたいに

(子ども相手でも全く遠慮なく)
わたしや弟の手を
ピシャーン!!とはねのけて
どんどん札を取る...
いつも優勝をさらっていく...
そんなおじいちゃんでした。

 


でも、
北京時代の写真の
軍服を着た祖父は、

 

目に、力がありません。

 

そこにいるのは、

死んだ魚のような目をした、祖父。

 


祖母はよく、
「おじいちゃんは、北京で悪いことをしたんだよ」
と、わたしに、そう話しました。

 


戦場の現実を、
目の当たりにした祖父は、


とても

心が

傷ついていたのだと思います。


敗戦後に、
会社の近くにあった
教会へ、通い始めました。

 

 
毎年わたしの誕生日近くになると、
祖父はいつも
わたしに手紙を寄こしました。


手紙のはじまりは、いつも同じ。

 

「さざんかの花が咲きはじめると」

「ニコチャンを思い出します」

「元気に、楽しく、ガンバッテいますか」

 

大学生だったわたしに寄こした
誕生日の手紙には、


「母さんと仲良くネ!」と。


わたしはその頃、
母とあまり話をしなくなって。
母は祖母と祖父に相談をしていたんでしょう。

 

最後の方に、こんなことを書いています。


「いつも、自分の下にいる人を見る人になりなさい」

「上ではなく、自分より困っている人、辛い思いを」

「している人に、心を寄せられる人になりなさい」


...とっても、むずかしい宿題を
わたしにのこして

その2年後に祖父は
他界しました。

 

 

歯ブラシを見ると、

わたしは

祖父を思い出します。

 

 

街も人の心も

焼け焦げた

あの時代に、

 

祖父たちの宣伝カーのライトは

闇を照らして、

そこに人が集まり、

その光は、空から見たら、

温かくて優しい光の柱のように

見えたかもしれません。

 

 

この頃、

何度も何度も、繰り返し

この歌を聴いています。

 

祖父の生きた、その時代と、

わたしの生きる今の時代を想いながら。

 

 

 

「交わしたはずのない 約束に縛られ」
「破り棄(す)てようとすれば」
「うしろめたくなるのはなぜだ」

 

「たとえ鬱が夜更けに目覚めて」
「獣(けだもの)のように 襲いかかろうとも」
「祈りをカラスが引き裂いて」
「流れ弾の雨が 降り注ごうとも」


「この街の空の下(もと) あなたがいるかぎり」

「僕は逃げない」

 

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(作詞:堀込高樹 作曲:堀込高樹

 

nicosa