あなたに会えたあの日から

生まれる前のやくそくが、今、現実になる

忘れていた記憶

f:id:nicosa:20201104181234j:plain こんばんは。nicosaです。

パンデミックの中にあっても、 夏は過ぎ、秋は来て、 季節はいつもとおなじように 冬へと向かっていきます。

10月6日、火星と地球が最接近しました。東の空にあるその星は、とても大きく赤く輝いて見えました。

赤く大きく輝く星。

前にも見たことがあります。 2年前。2018年の夏。

わたしにいろいろなことが起こった年でした。 いろいろなことに気づいたような気がした年でした。

あれからもう2年。

2020年。 何かが終わり、何かが始まる年。 夏至を過ぎて、 秋分を過ぎた頃、 わたしはまた、 自分自身と一人で向き合っていました。

こんな夢を見ました。

「思い出して。」

「ちゃんと思い出して。」

「あの時何があったの?」

「その時、ちいさなnicoちゃんは何をしたの?」

ずっと忘れていた、ずっと思い出すことのなかった記憶の映像が頭の中に浮かびました。

映像が始まったとき、そこに映る女の子が自分だとわかりませんでした。

それは、わたしの中からなくなっていたはずの記憶だったから。

教室に、誰も座っていない机が並んでいます。

教室の窓側の机に女の子が一人座っています。

頭が机に着きそうなぐらい背中を曲げて、顔の下にあるおかずが入ったお椀を腕で隠すようにして。

教室の反対側の壁際には子供たちが並んで立っています。

押し殺すように、クスクス笑う声。

「片付けできない。」 「昼休み終わっちゃう。」 「もう、机、寄せよっか。」 ひそひそ話す声。

クスクス笑う声が大きくなって、

突然、机が音を立てて動き出し、

誰も座っていない机が全部、その女の子の机目掛けて、すごい勢いで動き出しました。

女の子は怯えるように脇の下から周りを見て、上靴を脱ぎ、

慣れた様子で、自分の机の上の給食のお盆の上に頭を抱えてしゃがみ込みました。

おかずの入ったお椀やパン皿が、床にガチャーンと音を立ててなだれ落ちました。

女の子の机に、周りの机が音を立ててぶつかり、そして止まりました。

「行こ。」 「気持ち悪いから放っとこ。」

机を動かしていた子どもの一人がそう言いました。

そのとき、男の子の声がして、

「また!」

「やめろって!やめろよ!」

教室に駆け込んで来たその男の子は、机によじ登って、机の上を歩いて行き、自分の机の上でしゃがんでいる女の子に手を差し出しました。

「おいで」

男の子は女の子の手を引いて、女の子を床の上に連れて行きました。

それから、両手で机を掻き分けて、女の子の上靴を取ってきてくれました。

その男の子は、いつもわたしを助けてくれました。

わたしは、その男の子のことが好きになりました。

でも、好きにならないようにしました。 その男の子を好きになった「自分」を忘れました。

いつもわたしに意地悪をする女の子が、その男の子のことを好きだと知っていたから。

わたしの初恋の記憶はなくなりました。

学年が変わり、クラス替えがあって、 わたしにも友だちが出来ました。 毎日笑って過ごせるようになりました。

わたしは、忘れることにしました。 忘れてしまえば、わたしをいじめていた子たちとも仲良くすることが出来ました。

nicoちゃん、わたし、ryoくんと遊びたいの。」 「明日の休み時間、nicoちゃんのクラスに行っていい?」

「いいよ!」 「一緒に遊ぼ!」

忘れることにしました。

忘れなければ、

わたしはここまで生きて来られなかった。

明るく、はっきりと、前を向いて進むことは出来なかった。

そして、 人を愛するという、大切なはじめての経験も忘れてしまいました。

だから、それから、 人を愛するということがどんなことなのかわからなくなっていったのかもしれません。

こんなにいい大人になるまで 思い出さないほど、 きれいに消し込まれていた記憶。

「小さなnicoちゃんはずっと」

「ずっと思い出さないように、隠してた。」

「思い出したら、この子はきっと死んでしまう。そう思った。」

「でも、もう大丈夫。」

「その記憶を、今はちゃんと受け止められる。」

「だから、もう大丈夫だよって、今までありがとうって、ちゃんと小さなnicoちゃんに言ってあげて。」

「もう赦してあげて。」

「お願いだから。」

夢はそこで終わりました。 その夢の中で見た「わたし」は、 小さな子どもの頃の、現実のわたしでした。

そうだった。わたしは給食を食べるのが遅くて、何をするのも遅くて、みんなに嫌われていた。何も言い返せなくて、いつもただ泣いてばかりで、言われるばかりで、逃げてばかりで。 そのいじめは、日に日にエスカレートしていって。

はっきりと思い出しました。

それも自分。

そして、今ここにいるわたしも、自分。

「ありがとう。」

「もう、大丈夫だから。今までありがとう。」

「あなたが居たから、わたしが居るの。」

わたしはわたしに、そう言いました。

2020年。 今年も、季節は冬に向かっていきます。 冬至まで、あともう少し。

nicosa