あなたに会えたあの日から

生まれる前のやくそくが、今、現実になる

自分。

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こんばんは。nicosaです。

 

 

今から10年前。

2010年の8月のことでした。

引越しの荷造りをしていたわたしに、

お酒を飲んだ主人が、

引越し荷物のダンボール箱を投げつけました。

 

わたしはびっくりして、

何を言ったのか

よく覚えていないのですが、

何か言い返して、

言い合いになりました。

 

赤い、黒い、鬼のような顔で、

わたしを玄関の方まで押しやると、

出て行け!帰ってくるな!と、

そう吐き捨てて、

主人は寝室に入って行きました。

それから、寝室のドアが開がないように

中から細工したようでした。

 

義理母が心配していた酒乱が

始まったのだと思いました。

 

3歳のcicoは、

いつもわたしと一緒に寝ていて、

別の部屋にいました。

 

cicoを抱っこして、

実家に連れて行こうと思いましたが、

あの頃わたしは車の運転ができなかったので、

朝になってcicoが起きるまでここに居よう

それからどうするか考えようと思いました。

 

でもしばらくして、

中に入れないように細工をした

部屋の中で、

主人がまた、大声で汚い言葉を

叫びはじめました。

 

怖くなって。

 

家の鍵と財布だけ入った

カバンを持って、

わたしは、家を

飛び出していました。

 

 

あの人は、cicoには

手をあげないはず。

助けを呼ぼう。

cicoを連れに戻ろう。

 

まだ電車が動いていて、

とっさに電車に飛び乗りました。

 

その足は、

実家へ向かっていました。

 

 

バスに乗り換えて、途中から

乗客は、わたしだけになりました。

 

ほんとうに好きな人と

結婚しなかったから

バチが当たったんだ。

 

自分が情けなくて、

涙が出て止まりませんでした。

 

 

実家の側のバス停で

バスを降りました。

 

夏の虫の声が、一斉に

耳の中へ飛び込みました。

 

わたしは抜け殻みたいで、

一生懸命、前に歩こうとしても、

体がふわふわと浮いているみたいで、

地に足がついていないみたいで、

なかなか足が前に進みませんでした。

 

 

その時でした。

  

nicoちゃん、帰ってきてください」

 

「僕を助けて」

 

はっきりと、そう、聞こえた気がしました。

 

 

深夜になっていて、人通りはなく

わたしの名前を知っている人が

歩いているはずもなく、

 

怖くなって、逃げようと思いましたが

ふらふらして走れませんでした。

 

うしろに何かが居るような

気がして、

おそるおそる振り向くと、

 

立派な大きな角のある

 

1頭の鹿が、

わたしを、じっと見ていました。

 

 

鹿の目は赤く光って、

なんとなく

泣いているように見えました。

 

優しい鹿だと、

ふと、そう思いました。

 

実家の近くは、

野生の鹿が歩いているのを

よく見かけるところで、

 

こちらから何もしなければ、

鹿は襲って来ないことを

わたしは知っていました。

  

なぜかは分からないけど、

わたしは、

その優しい鹿に、

 

「大丈夫だよ。」

と、話かけていました。

 

 

実家の方向へ向き直り、

わたしは歩きました。

 

実家では、両親は寝ていて、

玄関の鍵は締まっていました。

 

実家の鍵を持っていたことを思い出し、

玄関を開けて、中に入りました。

 

物音に気付いた母が、

二階から降りて来ました。

 

「どうしたの?nicoちゃん」

 

「cicoちゃんは?」

 

母はゆっくり、わたしに聞きました。

 

 

「パパが、段ボールを投げてきて」

 

「cicoを」

 

「迎えに行かなきゃ」

 

「お父さん、車、運転してくれるかな」

 

わたしがそう言うと、

 

「cicoちゃんを置いて来たの?」

 

母は困っていました。

 

 

「どうして段ボールを投げるの?」

 

「どういうこと?」

 

わたしが泣いていると、

 

「もう遅いから」

「今日はもう寝なさい」

「お布団、ひいてあげるから」

 

「朝早く、お父さんに運転してもらって帰りなさい」

 

 

 

あれは、

主人の暴力が始まった日のことでした。

 

あの鹿は、

 「もう一人のわたし」だったのでしょうか。

 

もう一人のわたしは、ほんとうの自分に、

戻ってきて欲しかったのでしょうか。

 

 

ほんとうは、

怖がりではないし、

弱虫ではないし、

一人でなんでもできる。

  

ほんとうは、

車だって運転できるし、

恋愛することだって、

暴力なんかダメって言うことだって、

他人に依存せず自立して生きることも、

きっと、出来る。

 

もう一人のわたしは、

ほんとうの自分を思い出して、

ここから、わたしを

連れ出して、欲しかったのかもしれない。 

 

 

あの声は、わたしの中から

聞こえたのでしょうか。

 

夏のよる。あれは、

他人に依存して生きてきたわたしが、

自分を見つける旅に出ることを決めた

その、はじまりの日

だったのかもしれません。

 

 

 

nicosa