あなたに会えたあの日から

生まれる前のやくそくが、今、現実になる

鬼無  〜桃太郎の鬼退治


こんばんは。nicosaです。


先日訪れた瀬戸内海の直島のそばに、男木島(おぎじま)と女木島(めぎじま)という島が並んでいます。


この二つの島は、香川県高松市にある島です。




男木島は「雄」を指し、

女木島は「雌」を指し、 

この二つの島は、
雄雌島(しゆうじま)という、
関係にあるのだそうです。



雌雄島。



なんとなく、
その言葉に惹かれて、
調べてみたら、

この二つの島には、
伝え残された伝説がありました。



二つの島の内、

女木島に伝わるのは、

桃太郎の伝説でした。




女木島の別名は「鬼ヶ島」。




子どもの頃、

祖母に、

よく、

桃太郎さんのお話をしてもらったのを、
思い出しました。







nicoちゃん。」

「鬼はね。」

「人の心がつくるもの。」



祖母は、
桃太郎さんのお話をするとき、
いつもそう言いました。



私は、その頃、鬼を見たことがなかったので、
祖母の言っている言葉の意味が、
分かりませんでした。


 




「ほかのおばあちゃんなら、たくさんの昔話を知っているのだろうけど、ばあちゃんはこのお話しか知らないの。」


「今日も桃太郎さんのお話。」


「眠くなったら、お話の途中でも、ねんねしなさい。nicoちゃんがねんねするまで、ばあちゃんはここに居ますからね。」




祖母は、
わたしの横に、
ごろんと横になって、
わたしの髪を撫でながら、
話し始めます。


桃太郎さんのお話。









鬼ヶ島(おにがしま)は、
鬼たちが住むと言われる、
想像上の島

異界の島。

海に囲まれたその島へは、
舟を使って、
海を渡って、
上陸する。






桃太郎は、

雉と犬と猿を従え、

街へ出てきては悪さをする、

鬼を退治するために、

鬼ヶ島へと向かう。




桃太郎伝説

桃太郎が、
鬼ヶ島へ鬼退治に行くという内容のお話は、
日本の各地に伝え残されています。





女木島を「鬼ヶ島」とする、
香川県高松市に伝わる、
桃太郎伝説では、


桃太郎は、
孝霊天皇(前342 - 215年)の、
皇子の稚武彦(わかたけひこ)だと、
言われているそうです。




お婆さんは、
年頃の美しい娘という、
設定になっていて、


開拓のために、
このあたりに立ち寄った稚武彦(桃太郎)は、


川で洗濯をしていた美しい娘(お婆さん)に、
一目惚れをします。




そして、




その娘と娘の夫が暮らすその地域では、

海賊(鬼)が、

悪さをしにやってきて、

人々はとても困っているという話を、

稚武彦は耳にします。




稚武彦は、
鬼を退治しなければいけないと、
勇気を振り絞って、
鬼退治に行くことを、
決心するのでした。



その娘の作った、
「黍団子(きびだんご)」を腰につけ。


雉子と犬と猿をお供に。


鬼の暮らす、
女木島(鬼ヶ島)へ。







黍団子という食べ物は、

大切な人をこの世につなぎ止める、

そういう食べ物だと、

言い伝えられている地域もあるそうです。





鬼ヶ島という、
異界の地で、


稚武彦が迷子になりませんように、

必ず戻って来てくれますように、


そう思った娘が、
稚武彦に、
持たせたものだったのかもしれません。







香川県高松市
鬼無地区の、
「鬼無」という地名は、


稚武彦が、

女木島に、

鬼退治に行き、


鬼が、
女木島から居なくなったという、
伝説から、


この地に鬼なし、
「鬼無(きなし)」と、
呼ばれるようになったと言われています。







この地に、
鬼は居なくなった。







でも、
成敗すれば、
鬼は居なくなるのでしょうか?




祖母はいつもこう言っていました。
「鬼は、人の心がつくるもの。」




「鬼」をつくってしまった、
その「社会」や「しくみ」を、
変えなければ、



鬼は、いつまでも、いつまでも、
あとから、
あとから、

生まれてきて、



鬼に手をかけて、
成敗したところで、
鬼は居なくならない。





「鬼」は結局、
「鬼のように見えるもの」は結局、
わたしたちが、
作り上げたもの。

わたしたちがつくった、
「社会」や「しくみ」の中で、
生まれたもの。




稚武彦は、

きっと、

そのことに気付いたのだと思います。
 





だから、
女木島から、
「鬼」は、(海賊は、)
居なくなったのだと思います。








旅の途中、
美しい娘に一目惚れをして、
運命を感じる。


その娘を守りたいと、

心からそう思った稚武彦は、

自分のやるべき仕事に気付きました。


娘から貰った、

黍団子を腰につけ、

お供を引き連れ、

鬼退治へと向かう。




鬼(海賊)と話し合いをした稚武彦は、

「鬼」をつくってしまった、

「鬼のように見えるもの」を
つくってしまった、

この世の中を、

変えなくてはいけないと、

そう思う。





世の中を変えるために、
父親の孝霊天皇に、
相談をしたのかもしれません。
自分にできることを。
一生懸命に。






「鬼は、人の心がつくるもの。」




鬼の居ない「鬼無」をつくった、

稚武彦は、

それに気付いた人だったのだと、

そう思います。





雌雄島のもう片方、
男木島には、
豊玉姫伝説」が伝え残されているそうです。
いつか船に乗り、
また瀬戸内海を渡り、
この二つの島へ行ってみたいなあと、
そう思っています。






(今日はあともう少しだけ…)




わたしの大好きなチェコの芸術家、チャペック兄弟。その弟のカレル・チャペックはこう言っています。


「ねえ、子どもたち、もし誰かがおとぎ話は本当じゃないと言う人がいたら、そういう人は信じちゃいけない。おとぎ話は本当であるばかりか、それ以上のもの。」


「真のおとぎ話、真の機能を備えたおとぎ話は、車座になった聴衆がいるお話だ。何かを語る必要から、耳を傾ける喜びから、それは生まれる。」




プラハ工芸美術大学教授で、チャペック兄弟の研究者パヴラ・ペチンコヴァー氏はこう言っています。

「二人の作品は、子どもだけではなく、私たち大人にも教えてくれる。魔法と奇跡のおとぎ話の世界は、日常生活に疲れ、単調さに飽きて逃げ込むガラスの城なんかではなく、注意深く観察してさえいれば、今、ここでも体験できるものなんだと。」



(2018年 渋谷区立松濤美術館、芦屋市立美術博物館 主催「チャペック兄弟と子どもの世界展」図録より引用)




nicosa