昨日の夜は月がとてもきれいで、
そして肌寒い夜になりました。
今年の秋、はじめてコートを羽織りました。
cicoのサッカーの練習を待つ間、
月をぼんやりと眺めていました。
この練習場にはじめて来たのは、
cicoが小学1年生のときでした。
4月の初め、
太陽が沈むと、
まだ肌寒い、
春休みの夜でした。
わたしは春のコートを羽織って、
仕事を早退して、
cicoを連れて、
女子のサッカースクールが開かれている、
この練習場にやって来ました。
女の子とサッカーをしたら、
cicoは、
喜ぶんじゃないかと、
そう思って。
いつも、
男の子の中に、
一人だけの女の子。
男の子のお友だちはみんな、
いつもcicoと仲良くしてくれるけれど、
女の子とも、
サッカー、
してみたら、
それも楽しいかもしれないと思って。
体験練習を申し込んだら、
コーチの方は、
是非来てください!と、
おっしゃってくださいました。
その頃は、
まだ、
ペーパードライバーで、
車の運転に自信がなく、
仕事も忙しかったので、
家から離れたその場所に、
平日の夜に、
cicoを連れて来る自信はありませんでした。
せめて1日だけでも、
女の子とサッカーをと、
そう思って。
cicoは、
はじめは緊張していましたが、
サッカーボールをみんなと蹴り始めると、
満面のニコニコ笑顔になりました。
楽しそうに、
声を出して、
笑いながら、
ボールを蹴っていました。
体験練習に訪れた、
そのサッカースクールは、
今、cicoが所属している女子クラブチームの、
小学生の女の子向けのスクールでした。
チームのお姉さんたちが、
時々、
そのスクールの子どもたちと、
一緒にサッカーをしてくれます。
cicoも、
中学生になり、
チームに入り、
スクールの子どもたちと、
サッカーのミニゲームをしたり、
しています。
体験練習の日、
チームのお姉さんが、
一番小さいcicoに、
優しくパスを出してくれて、
cicoは初めて、
ミニゲームで、
ゴールを決めました。
cicoと同じように、
体験練習に来ていた、
小学4年生の女の子のお母さんが、
寒そうに練習を見ていた、
わたしの側に来て、
持って来ていた温かいお茶を、
コップに入れて、
わたしに渡してくれました。
「良かったらどうぞ。」
「温まりますよ。」
「体験ですか?」
「女の子と一緒に、サッカー、させてやりたいですよね。」
「あんなに楽しそうな娘、見たことない…」
「ふふふ。夜のサッカーの見学の時は、春でもこれぐらい着込まないと。」
「わたしね。あの子が生まれた時、あの子がサッカーするなんて思ってなかったし、わたしがこんな格好するなんて思ってなかったです。」
「ピアノとか?バレエとか?習うんだと思ってた。ふふふふ。」
そのお母さんは、
そう言って、
ちょっと困った顔で笑っていました。
「この格好してないとね、寒くて、寒くて。」
「こんな話、サッカーしてる女の子のお母さんにしかできないな、ふふふふ。」
「大変ですよ。大きくなればなるほど、男の子の中では、なかなか。」
「サッカーが好きな女の子がみんな、澤さんじゃないんだから。」
そのお母さんに貰った、
温かいお茶が、
わたしの心を、
じんわりと優しく、
あたためました。
今でも、
あの日のこと、
あの温かいお茶のこと、
ずっと、
忘れられません。
被災地で寒い夜を過ごしていらっしゃる、
たくさんの方に、
少し離れたところから、
温かいお茶を。
nicosa